グジャラート〜ガンジーを育んだ大地〜
 インド西部のグジャラート州は、インドの綿織物の中心地であり、かのマハトマ・ガンジーの出身地としても知られている。ガンジーはイギリスの植民地支配に抗する手段としてインド民族の自立を訴え、その象徴としてチャルカ(紡ぎ車)で手ずから布を織った。それも、ガンジーが織物の都で生まれ育ったことと関係があるのかもしれない。

 また、グジャラート州はドライ・ステート(禁酒州)である。外国人も許可証がなければ酒を買うことができない。ここにも、菜食を貫き、酒など飲まなかったガンジーの影響があるのだろうか。

 ブジ空港へはムンバイ(かつてのボンベイ)から約1時間で到着する。ブジ空港は空軍と共同使用の小さな空港であった。

 ブジは、グジャラート州カッチ地方の中心地。住民の大半はラージャスタンから移動してきたラバリ族である。ラバリ族は色鮮やかな民族衣装を着て、大きな鼻輪と腕輪の飾りをつけたおしゃれな民族である。この地方にはラバリ族のほかにもジャット、バルワットなどの部族が住んでいるが、女性は皆、身を飾ることを好むそうだ。男性はというと、頭に大きなターバンをするくらいで、大して身なりに気を使っていない。

 警察の許可を得て、「ラスト・フロンティアー」と呼ばれるこの地方の村を訪れた。村人は皆、人なつっこい。土壁をカラフルな絵で飾りたてた藁葺き屋根の家へ招かれ、お茶をごちそうになった。

 ブジから車でカッチ湿原を走り、大きな塩田を右手に見ながら、カッチ湾沿いをさらに進む。すると、今度は見渡す限りの綿花畑が開けた。誰からともなく、「おおーっ」という感嘆の声が上がる。綿花畑の“海”を進むようにして、ザイナバードとアーマダーバードへと向かった。

 アーマダーバードはグジャラート州の州都であり、西インドではムンバイに次ぐ大都市である。市街地はにぎやかで、しかも女性たちが美しい。色鮮やかなサリーを身にまとっているのはもちろんのこと、さまざまなアクセサリーをふんだんに身につけて着飾っている。ネックレス・イヤリング・髪飾り・腕輪・指輪などなど…。グジャラート州は、織物のみならずさまざまな工芸も盛んな土地である。バザールでも、織物・染物・木彫りや金属の工芸品など、色鮮やかな装飾品がたくさん売られている。

もちろん、色とりどりの織物を売る店もたくさんある。市街地をあてもなく歩くだけでも楽しくなってくる街だ。

 アフマダーバードは、11世紀にその基礎が築かれた古い街である。街の中にも古い建築物が多い。16世紀にこの街を訪れた歴史家ファリシタは、「もしかすると、世界でいちばん美しい街かもしれない」と書き残している。

 むろん、いまも当時の名残はある。外敵の侵略を受けることの多かった西インドには数多くの宗教が混在しているが、アフマダーバードにも、イスラムのモスクが数多くある。駅の近くにある、有名なスィディ・バシール・モスクもその一つだ。

 古い建築物の多くが白い石造りで、柱などには丹念な彫刻が施されている。

 そして、このアフダマーバードには、マハトマ・ガンジーたちが暮らしたアーシュラム(修道場)もある。市街地を縦断するサバルマティ河の西岸に面した、閑静かつ質素なたたずまいの建物である。

 アーシュラムの別棟には、ガンジーが暮らした部屋も当時のままに保存されており、見学することができる。飾り気のまったくない部屋の片隅には、ガンジーが回したチャルカもあった。私利私欲を捨て去り、インドの民衆のために命を捧げた「裸足の聖者」の声が、聞こえてきそうな気がした。「マハトマ」とは本名ではなく、「偉大な魂」を意味する尊称である。